最近レバレッジETFに投資して一攫千金を狙う『レバナス民』という言葉が注目を浴びています。
レバナスとはナスダック指数の値動きに2倍のレバレッジをかけたETFです。
2021年までは株価上昇でハイリターンを続けていましたが、2022年に入り株価が不安定になると大損害を出す投資家が大勢現れて、レバレッジをかける危険性が注目されだしました。
そのレバナスよりさらに高い3倍のレバレッジをかけるETF『SOXL』は極めて危険な商品といえます。
特にFIREを目指して積立・長期保有する方法がヤバい理由を解説します。
この記事の内容を読むとこんなことが分かります。
- SOXLとは半導体株価指数の3倍値動きするETFです
- SOXLのデメリット(経費率、値動き、倍率変更リスク)について解説します
- SOXLを長期保有すると資産がどんどん減る可能性があります
- 長期保有にむいているおすすめの投資法について解説します
著者について
- 節約・副業・投資でコツコツ貯めた資産は5000万円をオーバーしました
- 株式投資歴15年程度。リーマンショック、東日本大震災などの暴落を経験。
- ETFを組み合わせて、利回りと安定を追求したポートフォリオを提唱しています
・この記事を書いている私のプロフィールはこちらです。
- 節約と投資と副業が趣味の40代サラリーマン
- 仕事は原価計算などお金に関する仕事一筋
- 趣味が興じて簿記2級を独学で取得
- 4人家族で生活費は月27万円。資産は4千万
- 35歳でうつ病を経験し、会社に依存しない生き方に挑戦中
SOXLの長期保有が超やばい理由を徹底解説!今後の見通しも解説
SOXLとは
SOXLとは「Direxion デイリー 半導体株 ブル 3倍 ETF」のことです。
ICEセミコンダクターズ・インデックスの3倍のパフォーマンスに連動しています。
世界を代表する半導体メーカーに分散投資しています。
SOXLの構成銘柄
- エヌビディア
- ブロードコム
- インテル
- ゴールドマン・サックス・ファイナンシャル・スクエア・ファンズ
- クアルコム
- テキサスインスツルメンツ
- アドバンスト・マイクロ・デバイセズ
インテルやクアルコムなどは、日本でもパソコンのCPUとしてなじみの会社ですよね。
SOXLの最新チャート
SOXLの週足チャートは以下の通りです。
特に2022年1月の高値から10月には1/10以下まで下落しています。
3倍のレバレッジの影響で、ジェットスターのようなチャートになっています。
SOXLの過去チャート
続いてSOXLの過去長期チャートを紹介します。
以下が過去5年間のチャートをSOXL(青線)、SOX(橙)、S&P500(青)で比較したチャートです。

2020年からSOXLは大きく上昇をして、2022年以降大きく値下がりをしています。
すでに値上がりを開始する前の価格まで下落して、多くの投資家が含み損を抱えていると考えられます。
SOXLの年利
SOXLが設定された2010年から平均して45%という高い年利を達成しています。
2010年といえばリーマンショックで株価が暴落した後なので、このときにSOXLに投資を始めたら大きな利益を得られていました。
具体的な数字で説明すると2010年に10万円投資していれば、2020年には約410万円にまで増えていたことになります。
ただし2022年に入り株価が下がり続けると年利は大きく低下しました。(2022年10月現在)
- 1年間の年利:-83.03%
- 3年間の年利:-16.32%
- 5年間の年利:-3.88%
SOXLのやばい特徴
SOXLが本当に3倍の値動きをするのか確認してみます。
2021年12月から2022年5月までのチャートをナスダック指数と比較してみました。
赤い折れ線がSOXL、青い折れ線がナスダック総合指数です。

比較開始からナスダック指数は約25%、SOXLが約70%下落しています。
確かにSOXLはナスダック指数のほぼ3倍下落していることが分かります。
この時期に10万円を投資をしていた場合、7万円近い大損をしていたことになります。
SOXLはなぜ下がる。今後の見通しと予想は?
SOXLが連動するナスダック100指数が置かれている状況は好ましくありません。
その理由は米国では過度なインフレによって今後の景気に不透明感が出ているからです。(図表1)
米連邦公開市場委員会(FOMC)が利上げペースを減速させる可能性がありますが(図表2)、市場の予想を裏切る利上げによって益々株安が進むリスクもあります。

SOXLのデメリット・危険性とは
それではSOXLのデメリットや危険性について、一つずつ解説していきます。
経費率が高い
まず1点目は経費率の高さです。
インデックス投資経費率の比較
- SOXL:0.95%
- VOO(S&P500連動ETF):0.03%
SOXLの経費率は、S&P500に連動するETFの約30倍です。
長期保有する場合、経費率の高さはパフォーマンスに大きく影響します。
例えば100万円を10年間投資した場合、経費率1%と0.03%の手数料の差は単純計算で9万7千円になります。
値動きが激しい
前章のチャートを見てもらって分かるように、SOXLの値動きはジェットコースターのようです。
ウクライナ侵攻のような大きなイベントがあると、1週間で価値が半減することがあります。
長期投資の場合、様々なアクシデントが度々訪れるので、そのたびに資産が突然半分以下になることもあります。
リーマンショックが毎年訪れるようなチャートと付き合っていくことになります。
倍率変更されるリスクがある
レバレッジETFは過去に度々倍率変更をしてきた歴史があります。
その理由は証券取引委員会からの指導などで、リスクを下げるように指摘が入るためです。
倍率変更が行われるとタイミングが悪いと大きな損害が発生します。
例えば2020年4月に倍率変更された金鉱株レバレッジETF「NUGT」の例を説明します。
NUGTはコロナショック前(2020年4月)まで、金鉱株ETF「GDX」のレバレッジ3倍に設定されていました。
ですがコロナショック後にレバレッジ2倍に変更になりました。
以下のチャートがそのときのNUGT(青線)と、「GDX」(黄線)を比較したものです。

NUGT(青線)はコロナショック時にレバレッジ3倍だったことで、GDX(黄線)と比べて大幅に落ち込みました。
その後レバレッジが2倍に変更されたため、GDXが元の水準に戻しているのにNUGTは落ち込んだままです。
SOXLの長期保有が今後危険な理由
デメリットに加えて、SOXLは長期保有には向かない理由があります。
それでは1つずつ解説していきます。
市場成長率のバラツキが大きい
2021年に度々半導体の供給不足がニュースになっていました。
トヨタ自動車でも生産ラインが半導体不足で止まるなど、深刻な社会問題にまで陥りました。
これだけ聞くと、いかにも半導体の需要が伸びているように聞こえますが、過去の市場成長率を見ると必ずしもそうではありません。
半導体市場の市場規模と成長率を調査したデータを紹介します。

2015年から2022年にかけて、市場規模は2倍近くに拡大しています。
ただし成長率はばらつきが大きく、ここ1,2年の成長率だけで判断をするのは危険です。
PC・スマホ市場の縮小が予想されている
2022年7月27日に米ガートナー社が世界の半導体市場予測を公表しました。

公表によると2023年には成長率が-2.5%となっています。
その大きな理由としてPC・スマホ向け半導体が13.1%減少することが挙げられています。
水不足で今後の生産量に影響する
半導体の製造には多量の純水が必要になります。
ですが水資源は人口増加による生活用水や、農業用水の需要増加もあって、今後不足すると予想されています。

そうなると半導体は需要があっても、そもそも生産自体ができない可能性があります。
将来的に半導体市場の成長率が鈍化する原因になるので注意が必要です。
指数横ばいでも減価される
SOXLに限らずレバレッジETFの特徴に、連動する指数が横ばいでも資産が減り続ける(減価効果)があります。
具体的に運用した場合をシミュレーションしてみます。
指数が下記の表のように9日間にわたって±10%の間を上昇・下降して、最終的に元の値に戻った時を想定します。
9日間の資産がどうなるか検証した結果がこちらのグラフです。


結果はレバレッジなしなら資産は変わりませんが、レバレッジ3倍では6%の減少になりました。
9日間で6%資産が減るなら、1年間指数が横ばいが続けば約60%資産が減るリスクがあります。
長期保有すれば大損、致命傷になりえます。
株価が今後下がるとヤバい
SOXLが注目を集めた理由は、2021年まで続いた株高トレンドが背景にあります。
株価が上がり続ければ、レバレッジを効かせたETFは通常よりも大きな利益を得られるからです。
ですがこれはすでに過去の話です。
アメリカを始め欧州なども2022年から金融緩和をやめて、金利の引き上げに動いています。
つまり市場に出回るお金が減って、株価を押し上げることができなくなります。
これからの株価が今までのように上昇することはないと考えるべきです。
いったん株価トレンドが低調に変わると、レバレッジは資産の減少に恐ろしいダメージをもたらします。
暴落リスクに弱い
株式市場はこれまで数年ごとに暴落を繰り返しているので、長期保有すると株価暴落に遭遇する確率が高くなります。
もし暴落が起きた場合、レバレッジETFに多くの資産を投資していると、そのほとんどを失う可能性があります。
NASDAQ指数に連動するレバレッジ2倍のETFレバナスの例で説明をします。
下記のグラフのようにレバナス(黄色)は、2000年に起きたITバブルの崩壊では資産が5%まで減少します。

その後、NASDAQ指数は14年後にもとの価格を超えていますが、レバナスは20年経った2021年になってももとの水準に戻っていません。
その理由は指数が横ばいでも価格が下がるメカニズムによるものです。
レバレッジETFは価格が下がってから元に戻るのが、レバレッジなしより難しいからです。
SOXLよりおすすめの投資方法とは

SOXLが長期保有にむかない理由を説明してきましたが、それではどのような投資方法が長期保有におすすめなのでしょうか。
長期保有に向いている投資商品
長期保有にむいている商品の条件は以下の通りです。
- レバレッジがかかっていない
- 将来性がある
- 税金・経費率が低い
- 値動きができる限り穏やか
- 換金性が高い
こららの条件を満たす商品とは、例えばS&P500に連動する「VOO」などです。
過去100年以上、平均して年率6~7%のリターンを出してきた実績があり、経費率は0.03%と他に類を見ない低さです。
そのうえつみたてNISAやiDeCoを利用すれば、利益に対して非課税です。
今のS&P500は非常に割高なので、今後は調整が続くかもしれません。
ですが長期保有でコツコツ購入し続けていれば、将来今の株価を超えたときに大きなリターンを得られます。
長期保有に向いている投資方法
そして長期的に積立投資をしていくうえで、大切なことは一度に大金を投じないことです。
株価はいつ暴落するか分からないので、暴落した時に生活に影響が出ないようにするためです。
あくまで毎月の貯蓄の中から、無理のない範囲で購入を続けることが大切です。
なのでドルコスト平均法やバリュー平均法などを利用するのがおすすめです。
投資でつながる。日本初のソーシャルトレーディング【アイデアブック】
最後に
最後にこの記事をまとめます。
- SOXLはICEセミコンダクターズ・インデックスの3倍のパフォーマンスに連動する投資商品です
- 2021年までの株高トレンドでは急上昇して話題になりました
- SOXLは経費率が高く、値動きが激しい、倍率変更リスクがデメリットです
- 長期保有が危険な理由は以下の通りです
①市場成長率のバラツキが大きい
②水不足で将来性が不透明
③指数横ばいでもなぜか下がる
④投資タイミングがヤバい
⑤暴落に弱いからヤバい
本来、株式投資とは社会の発展に伴う企業の成長を原資として利益を得る方法です。
そのため必ずしも短期的に株価が上がるかどうかは分からないのです。
にもかかわらずSOXLのようなレバレッジETFは、1度の下落で資産のほとんどを失う、非常に危険な金融商品です。
そういった無理なギャンブルで一喜一憂するよりも、時間や労力は本業や大切なプライベートに費やすほうが人生の充実度を上げてくれると思います。
かつての私のように、夜間の米国市場の値動きまで気になるような生活は本当にお勧めしません。
このブログではさらに詳しい投資に関する知見をこちらの記事でまとめています。
このブログでは節約・副業・投資に関する資産形成に役立つ情報を紹介しています。
一人でも多くの読者の方が、今日から豊かな人生設計を始めるきっかけになればと思っています。
良かったら気になる記事があれば、こちらから是非お読みください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事の参考文献・関連サイト
- EE Times Japan「2022年半導体市況展望」
- 日経XTECH「2023年の半導体市場はマイナス成長に反転、PCとスマホが足を引っ張る」
- 産経新聞「台湾で深刻水不足と電力供給に懸念 半導体生産に影響も」
- 国土交通省「国際的な水資源問題への対応」
※関連記事です
←この記事がお役に立ちましたらクリックしていただけると励みになります
人気ブログランキング
←この記事がお役に立ちましたらクリックしていただけると励みになります
にほんブログ村
コメント